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岩崎研究室ゲストセミナー

岩崎研究室では、通常の研究室セミナーの他に、不定期に外部から研究者をお招きしゲストセミナーを開催しています。研究室外からの参加・聴講も受け入れていますので、ご自由にご参加ください。
東京大学柏キャンパス 新領域生命棟へのアクセスについては、こちらをご覧ください。

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これからのゲストセミナー

TBD

過去のゲストセミナー

<第41回>
2023年8月28日(月)16:30- 東京大学柏キャンパス 新領域生命棟 地階講義室
Dr. Olivier GASCUEL (Directeur de Recherche au CNRS, ISYEB –CNRS & Muséum National d’Histoire Naturelle, Membre de l’Académie des Sciences, Chair Holder - Paris Artificial Intelligence Research Institute)
「Deep learning from phylogenies to uncover the dynamics of evolution」
Abstract:
Widely applicable, accurate and fast inference methods in phylodynamics are needed to fully profit from the richness of genetic data in uncovering the dynamics of epidemics. Standard methods, including maximum-likelihood and Bayesian approaches, generally rely on complex mathematical formulae and approximations, and do not scale with dataset size. We develop a likelihood-free, simulation-based approach, which combines deep learning with (1) a large set of summary statistics measured on phylogenies or (2) a complete and compact representation of trees, which avoids potential limitations of summary statistics and applies to any phylodynamics model. Our method enables both model selection and estimation of epidemiological parameters from very large phylogenies. We demonstrate its speed and accuracy on simulated data, where it performs better than the state-of-the-art methods. To illustrate its applicability, we assess the dynamics induced by superspreading individuals in an HIV dataset of men-having-sex-with-men in Zurich. Our tool PhyloDeep is available on github.com/evolbioinfo/phylodeep. Beyond the application of the method to epidemiology, I will talk about the neural network architectures we used, and how it works. I will also briefly show how this method applies to macroevolution, and discuss our recent results since the publication of PhyloDeep in Nature Communications.

<第40回>
2023年7月14日(金)15:00- 東京大学柏キャンパス 新領域生命棟 地階講義室
服部素之(復旦大学生命科学学院教授)
「構造生物学の最前線〜CorC/CNNMファミリーMg2+輸送体の構造機能解析を例に」
Abstract:
CorC/CNNMファミリータンパク質は、生命のあらゆるドメインに広く分布するMg2+輸送体である。黄色ブドウ球菌において、CorCは感染宿主へ高濃度Mg2+イオンに対する耐性を付与することで、その病原性を高めることに貢献している。枯草菌では、リボソームを標的とする抗生物質にさらされると、CorCの発現が上昇し、Mg2+の輸送を増加させて抗生物質耐性に関与している。従って、CorCは新たな抗生物質開発のターゲットとして注目されている。しかし、その生物学的に重要にも関わらず、これまでそのMg2+輸送機構は不明であった。
本セミナーでは、講演者の研究室によるCorC/CNNMファミリー輸送体の構造・機能解析と、構造に基づくCorC阻害剤の探索について紹介する。 また、輸送体の構造ダイナミクス解析へのAlphaFold2の応用についても紹介する。

<第39回>
2023年1月13日(金)10:00- 東京大学柏キャンパス 新領域生命棟 地階講義室
堤真人(東京大学)
「変分オートエンコーダを用いた霊長目の下顎形態定量化」
Abstract:
形態は生物にとって非常に重要な表現型の一つであり、種によって異なる形態が現れそれらが様々な機能と密接に関連している。種ごとの形態の違いや形と機能の関連を理解するためには、形態を定量化することが重要となる。
形態を定量化するために従来からよく用いられている手法の一つとしてランドマーク法が挙げられる。この手法は形態上にランドマークと呼ばれる幾何学的または解剖学的に特徴的な点を配置し、その点の位置情報に基づいて定量化する方法である。しかしながらこの手法はランドマークの位置に関する明確な定義が無いためランドマークを決める恣意性が残る。また、種によっては対応するランドマークが無いため、しばしば種間の比較が困難になるなどの問題点が存在している。
そこで演者らは、この問題点を解決すべく新たな生物形態の定量化手法として変分オートエンコーダ(以下、VAE)を応用したMorphological Regulated Variational AutoEncoder (以下、Morpho-VAE)を開発した。Morpho-VAEは教師なし学習モデルと教師あり学習モデルを組み合わせ、異なるラベルを持つデータを区別する形態学的特徴に着目することで次元を削減するものである。 本セミナーにおいてはMorpho-VAEを霊長類の下顎データに適用した結果と今後の展望について紹介したい。

<第38回>
2022年9月9日(金)14:00- 東京大学柏キャンパス 新領域生命棟 地階講義室
Dr. Sudhir Kumar
Director, Institute for Genomics and Evolutionary Medicine, Temple University
L.H. Carnell Professor, Department of Biology, Temple University
「Evolutionary Technologies from Phylogenomics to Phylomedicine」
Abstract:
New mutations continuously arise in cellular and organismal genomes. Comparative analysis of sequences from individuals, strains, cells, populations, and species yields evolutionary conservation and divergence patterns. These patterns have been the key to reconstructing the tree of life and are fast becoming important for tracking the evolutionary histories of tumor cells and pathogens. Next-generation sequencing has fast-tracked these efforts, putting data-driven discovery and hypothesis testing on steroids. I will discuss our new evolutionary techniques for analyzing very large sequence datasets in phylogenomics (tree of life) to phylomedicine (tumors and coronavirus), including key biological insights generated by their application to big data. These methods have high accuracy, fast computational times, and small memory footprints. They will democratize big data analytics, improve scientific rigor, and make scientific pursuits broadly accessible.

<第37回>
2022年9月7日(水)10:00- 東京大学柏キャンパス 新領域生命棟 地階講義室
福島健児博士(University of Würzburg)
「分子収斂でつながる形質と遺伝子の進化」
概要:
地球上の生物は圧倒的に多様だが、その進化においては、全く新しい形質が無尽蔵に出現し続けるわけではない。哺乳類ならば飛翔能力、潜水能力、冬眠、反響定位、草食に腐肉食。昆虫ならば真社会性や絹糸生産。被子植物ならばC4光合成、水草、寄生植物や食虫植物。これらはすべて、全く異なる複数系統の生物が、よく似た形質を独立に獲得した例である。このように何度も起こった進化は「収斂進化」とよばれ、近年、同じ遺伝子の変化で引き起こされた事例が多数報告されている。そのため、形質の収斂進化と相関する遺伝子の収斂進化(分子収斂)をゲノム配列から見つけだせるならば、実験室での取り扱いが困難な生物であっても、形質の遺伝的基盤へとアクセス可能になるはずだ。このような動機から、私はこれまで、収斂的な進化パターンを活用して形質と遺伝子を関連付けるアプローチの開発を行ってきた。本発表では、その詳細と、私が興味を寄せる食虫植物への適用例を紹介する。
参考:Fukushima K, Pollock DD. 2022. Detecting macroevolutionary genotype-phenotype associations using error-corrected rates of protein convergence. bioRxiv 487346

<第36回>
2021年9月21日(火) 13:00- オンライン
三宅敬太氏(静岡大学大学院博士課程)
「ユニークなシアノバクテリアにおける光応答戦略の解明とその応用利用」
概要:
光合成生物にとって光は生育エネルギーとして利用しているため、自身に到達している光を認識することは重要であり、そのために高度な光応答機構を備えている。中でもシアノバクテリアでは、シアノバクテリオクロムという光受容体が中心的な役割を担っている。我々はシアノバクテリアの中でも長波長の光を生育エネルギーとして利用しているAcaryochloris marinaに着目することで、ビリベルジンという色素を結合し、遠赤色光と橙色光を認識する光受容体の発見に成功した。このビリベルジンは哺乳類も含めた広範囲の生物に内在する色素であり、ビリベルジンが吸収する遠赤色光は哺乳類個体への透過性も高い。このため発見された分子は、哺乳類の奥深くの組織・細胞での分子動態の可視化(蛍光イメージング)や分子活性の制御(オプトジェネティクス)に有用であると期待されている。
本セミナーではこれら光受容体の基礎的な知見から応用研究、光受容に結合する色素を合成する酵素の研究、さらにAcaryochloris marinaの光応答戦略の研究について紹介する。最後に、これからの新規なシアノバクテリオクロムの発見と実環境の中での光応答戦略の解明に向けたデータベースの構築に関して議論したい。

<第35回>
2021年6月30日(水) 13:00- オンライン
海老原諒子氏(東京大学大気海洋研究所・大学院新領域創成科学研究科博士課程)
「沈降性凝集体に発達する微生物群集の動態:メソコスムを用いた実験的解析」
概要:
一次生産によって固定された炭素が海洋表層から海洋内部へ輸送される過程(生物炭素ポンプ)は、大気中二酸化炭素の調整や海洋中・深層への炭素供給において重要な役割を担う。そのため生物炭素ポンプの制御機構の理解を深めることは海洋炭素循環モデルの精度を向上させるうえで重要な課題である。生物炭素ポンプを制御する過程の一つにプランクトンの死骸や排出物が集まった粒子(凝集体)が形成され沈降するプロセスが挙げられる。凝集体は沈降する間に物理的な攪乱や動物プランクトンの捕食による崩壊を受ける一方で、衝突した粒子同士が接着することで大型化する。海洋中の微生物は有機物の分解者として凝集体の崩壊に関わる要因として捉えられているが、多糖類のような接着物質の生産や珪藻の凝集を促進する等の作用が報告されていることから、分解者として凝集体の崩壊に関与するだけでなく粒子の凝集にも深く関わっている可能性が示されている。しかし、凝集化を促進するメカニズムやそれに関わる微生物群には、未だ不明な点が多く残されている。本研究では、凝集体の形成・崩壊に関与する微生物群とその役割の解明を目的として、メソコスムによる制御された環境下での凝集体の発達とその過程における微生物群集の動態を観察した。凝集体には海水中の自由浮遊性とは異なる細菌群が付着し、メソコスムでの培養期間が長くなるほど凝集体に特異な細菌群が出現した。

<第34回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2020年7月17日(金) 13:00- オンライン
高野 壮太朗 博士(産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門)
「一細胞解析技術と数理モデルを使って細菌の飢餓生存メカニズムを解き明かす」
概要:
生物の集団中には、他の多くの個体が生き残れない致死的な環境変化を生き抜く個体が少数出現することが知られている。同一の遺伝情報から成るクローン細菌集団においても、こうした細胞が一定数出現し、抗生物質や栄養飢餓といった種々のストレスへの適応を促す例が数多く報告されている。
演者らは、モデル微生物の一つである大腸菌を使って、致死的な飢餓環境で生存を続ける少数の細胞の生存メカニズムの解明を進めてきた。飢餓環境での生存には、細胞に内在する生理状態のゆらぎや細胞間相互作用が深く関わっていることが示唆されていたが、それらの影響を定量的に解析した研究例はこれまで皆無であった。
本セミナーでは、time-lapse顕微鏡や画像解析技術を使って、細胞ごとの増殖や応答性の違いを一細胞レベルで解析した研究結果について紹介する。また、長期間の安定した生存に対して、細胞間相互作用(死細胞をリサイクルする活動)が果たす役割を、数理モデルを使いながら実験的・理論的に解析した研究についても合わせて紹介したい。

<第33回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2020年3月6日(金) 13:00- 理学部3号館310号室
伊東 潤平 博士(東京大学医科学研究所)
「内在性レトロウイルスの駆動する生命現象と進化」
概要:
内在性レトロウイルス(endogenous retrovirus; ERV)は、古代のレトロウイルスが宿主の生殖細胞に感染することで生じた「ウイルス感染・侵略の痕跡」である。現存する哺乳類において、ERV由来の配列はゲノムの大きな割合(~12%)を占めている。このことは、進化の過程において、哺乳類が大量のレトロウイルス感染に暴露されてきたことを示唆している。また、いったん生殖細胞への侵入を果たしたERVは、トランスポゾンとして増殖を繰り返すことで、宿主のゲノムをさらに侵略していく。このようなレトロウイルス・ERVからの侵略に対抗するため、哺乳類の祖先はさまざまなウイルス防御機構を進化させてきた。レトロウイルスに対する防御機構を担う遺伝子の一群として、APOBEC3ファミリー遺伝子が知られている。APOBEC3はウイルスゲノムにguanine-to-adenine (G-to-A) 変異を導入することでレトロウイルスの複製を強力に阻害する。言い換えると、APOBEC3は攻撃したレトロウイルスの配列に痕跡(G-to-A変異)を残すという稀有な性質がある。このため、ERV配列におけるG-to-A変異の蓄積量を調べることで、ERVあるいはその祖先のレトロウイルスがAPOBEC3からどの程度攻撃を受けたかを推定することができる。本セミナーでは、160種類の哺乳類の比較ゲノム解析から明らかとなった「APOBEC3とERVの進化的軍拡競争」についての最新の知見を紹介する。
長年、ERVはゲノムに寄生する「ジャンクDNA」であると考えられてきた。しかし近年、一部のERVはエンハンサーとして働くことで、近傍に存在する遺伝子の発現調節に関与し、さらには初期発生等において重要な役割を果たすことが明らかとなりつつある。正常細胞において、ERVの転写およびエンハンサー活性は宿主のエピジェネティック制御により厳密にコントロールされている。しかし一部のがん細胞において、ERVの転写が異常に活性化していることが古くから知られている。演者らは、The Cancer Genome Atlasコンソーシウムの提供する5,470人分の腫瘍マルチオミクスデータを解析することで、一部の患者の腫瘍においてERVのエンハンサー活性が異常に亢進していること、およびERVの活性化が近傍に存在する数百種類の抑制性転写因子KRAB zinc-fingerファミリータンパク質(KZFP)遺伝子の発現誘導と強く関連していることを見出した。本セミナーにおいては、pan-cancer解析および細胞生物学的な実験解析から明らかとなった「ERVおよびKZFPの腫瘍抑制における機能」についての最新の知見を紹介する。
参考文献:
1, Ito et al., Retroviruses drive the rapid evolution of mammalian APOBEC3 genes. (2020) PNAS.
2, Ito and Kimura et al., Endogenous retroviruses drive KRAB zinc-finger family protein expression for tumor suppression. (2020) BioRxiv.

<第32回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2020年1月17日(金) 14:00- 理学部3号館310号室
明石 基洋 博士(東京理科大学)
「巨大ウイルスの生息地とその微生物生態系への寄与」
概要:
巨大ウイルスとは、世界各地で見つかりつつある原生生物へ感染する粒子径が200nm以上のウイルスである。このウイルスは、バクテリアと比肩するゲノムサイズを持ち(数Mbp)、アミノアシルtRNA合成酵素遺伝子を持つなど、他のウイルスにはない興味深い生物学的特徴を有する。しかし、その自然界における分布や生態系における位置付けは未解明である。我々は、海洋中には多くの巨大ウイルスが存在すること、土壌からの巨大ウイルス分離例があることなどを踏まえ、巨大ウイルスは水と陸地が接する水界線(水陸の境界線)沿いに宿主とともに存在するという仮説の下、巨大ウイルスの河川敷の土壌からの分離を試みた。その結果、荒川河川敷で採取した数グラムの土から、日本では未発見であったパンドラウイルス2種とミミウイルスを取得することに成功した。これらのウイルスのアメーバへの感染過程を観察したところ、巨大ウイルスに感染したアメーバ細胞の内容物が、ウイルスの感染後期に細胞外へ排出されることが分かった。この現象は、土壌環境中において集団を形成している宿主へ、ウイルスが効率的に感染を拡大することに寄与することを示唆する。以上から、土壌中に巨大ウイルスが高密度に存在し、それらが拡散した結果として、水環境が陸で増殖した巨大ウイルスのリザーバーとなっていると考えられた。

<第31回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2020年1月16日(木) 13:00- 理学部3号館310号室
鈴木 誉保 博士(農研機構)
「生物形態のデザイン原理:多要素構造、組立順序、組合わせ」
概要: 
枯葉にそっくりな蝶、精巧な動物の眼など、複雑な構造がどのように設計されているのか、どのように進化してきたのかは、興味深く重要な問題である。これまで、集団内の遺伝子頻度の変化による形質進化、いわゆる小進化、については理解が大きく進んできた。しかし、集団には少数でも存在していない新規の形質(例えば、複雑な構造など)の進化、いわゆる大進化、の理解はほとんど進んでいないのが現状である。
本セミナーでは、複雑な構造が有するデザイン原理として多要素構造を提案する(文献1)。また、新規に複雑な構造が生み出されてきたマクロ進化プロセスを解くための包括的な数理解析手法を紹介する(文献2)。本手法を利用して解明した例として、枯葉擬態の蝶(コノハチョウ)の進化を紹介する(文献3)。題材として、枯葉、岩、樹皮を覆う地衣類、ミュラー擬態、ベーツ擬態など様々な模様をした蝶を用いる。最後に、要素の組合わせ論的な進化について、蝶の性的2型の模様を題材に現在取り組んでいる研究を紹介したい。
文献1: Suzuki, Tomita, Sezutsu (2019) J Molphol 280:149-166.
文献2: Suzuki (2017) J Exp Zool B 328:304-320.
文献3: Suziki, Tomita, Sezutsu (2014) BMC Evol Biol 14:229.

<第30回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2020年1月14日(火) 10:00- 理学部3号館310号室
晝間 敬 博士(奈良先端科学技術大学院大学)
「植物感染微生物の寄生性・共生性を規定する分子基盤」
概要:
植物感染糸状菌の感染戦略は寄生から共生と多彩であり、 同一種であっても宿主環境によっては対照的な戦略をとり、寄生 (病原) 性と共生性の境は連続的であることが示唆されている。一方で、特定の菌株の系統ごとに比較して解析すると、寄生・共生どちらか一方の感染戦略を優先的にとることが多く、感染戦略の嗜好性は菌のゲノムや感染時の遺伝子発現応答の違いによって生まれていることが示唆される。 しかしながら、これまでは、寄生型および共生型の感染戦略を取る微生物は別々の研究分野で研究されていたことからも、両者の感染戦略を分かつ決定因子はこれまでほとんど明らかになっていない。   
発表者は、植物内に感染する糸状菌Colletotrihcum tofieldiae (Ct) が、様々な植物に病気を引き起こす炭疽病菌と近縁であるにも関わらず、貧栄養環境下でリンを植物に供給することで非菌根性のアブラナ科植物の植物生長を促す共生菌であることを発見している (Hiruma et al., Cell 2016)。 また、Ctは日本を含む世界中の多彩な植物種から単離されており、その中には共生菌に加え、同種であるにも関わらず同一植物の植物生長を著しく阻害する寄生菌が含まれることを見いだした。 本発表では、植物に感染する微生物の植物微生物相互作用を介した進化についての概要を紹介するとともに、上記の同種の菌株間での比較機能解析から見えてきた共生性と寄生性を分かつ分子基盤について紹介したい。

<第29回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2020年1月9日(木) 15:00- 理学部3号館310号室
ZHENG Yu(Tohoku University)
「Exploration of the Next-Generation Microbial Resource in the Post-Antibiotic Era」
概要:
The prevalence of antibiotic resistance and decrease in novel antibiotic discovery alarm us to identify novel bioactive natural products. In this seminar, I would like to introduce you the charming points of the class Ktedonobacteria, a unique bacterial lineage that we propose to be a promising next-generation microbial in the post-antibiotic era. This seminar will include four parts: 1) The unique taxonomic traits of Ktedonobacteria; 2) General genome features and biosynthetic potential of Ktedonobacteria revealed by in silico analysis; 3) In vitro antimicrobial activity of Ktedonobacteria and fermentation-driven discovery of novel bioactive compound; 4) Attempts to clone a type II polyketide synthase gene cluster to heterologously express a novel anthraquinone compound. Any comments and/or advices to the researches would be grateful.

<第28回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2019年12月20日(金) 15:00- 理学部3号館326号室
竹内信人博士(オークランド大学)
「対立的多階層選択により生起するセントラルドグマ」
概要: 
分子生物学のセントラルドグマは、ゲノムと酵素の間にある2種類の非対称性により成立している。1つは情報的非対称性であり、情報はゲノムから酵素へと流れるが、酵素からゲノムへは流れない。もう1つは触媒的非対称性であり、酵素は触媒活性を持つが、ゲノムは触媒活性を持たない。これらの非対称性はいかにして起源したのだろうか。本研究では、これらの非対称性は、複製分子とプロト細胞の間の進化的対立によって生み出され得る事をモデルを用いて示す。本研究のモデルは、プロト細胞の集団と、各細胞に含まれた分子の集団から構成される。分子は、触媒として働き他の分子の複製を助ける事もできるし、鋳型として働き自らが複製される事もできるが、これら2つの間にはトレードオフが存在すると仮定する。このトレードオフが、対立的多階層選択を引き起こす。すなわち、各細胞内における分子間の競争は分子が鋳型として働く事を選択するが、逆に細胞間の競争は分子が触媒として働く事を選択する。この階層間の進化的対立が、分子の間で情報的および触媒的な対称性の自発的破れを引き起こし、遺伝情報を担う分子と触媒機能を担う分子への分化、すなわちゲノムと酵素の分業(セントラルドグマ)を成立させる。本研究の結果は、セントラルドグマは進化の論理的帰結であり、もはやドグマとは言えない事を示唆する。

<第27回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2019年12月19日(木) 14:00- 理学部3号館310号室
徐寿明氏(神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士後期課程)
「環境DNAを研究する 〜その性質と動態に着目して〜」
概要:
近年、主に水域における新たな生物相モニタリング手法として「環境DNA (eDNA) 分析手法」が注目されつつあり、従来のモニタリング手法よりも非侵襲的かつ広範囲、迅速かつ高感度での生物相モニタリング例が数多く報告されるようになっています。一方で、適正なサンプリングおよび結果の解釈、また本手法の新たな適用可能性の開拓において、eDNAの由来や状態、移流や残存といった「eDNAの基礎情報」は極めて重要な役割を担いますが、それらの知見は未だ十分ではなく、不明瞭な部分も多く残されています。
発表者はこれまで、eDNAがどのような性質を有し、どのような動態を示すのか、すなわち「eDNAそのものを研究すること」に興味を持ち続けてきました。本セミナーでは、eDNAの基礎研究の重要性と課題について概説した後、研究成果の一部として、以下の二つのトピックについて紹介します。
(1)核およびミトコンドリアに由来する魚類eDNAの動態の比較
(2)長鎖eDNAを用いたバイオマス推定精度の改善可能性

<第26回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2019年12月13日(金) 13:00- 理学部3号館326号室
谷野宏樹氏(信州大学総合医理工学研究科博士課程)
「世界広域からのサンプリングで解き明かすフタバカゲロウ属 Cloeon の系統関係と特殊な発生システム」
概要: 
昆虫類は極めて多様な形質をもつ分類群ではあるものの,その発生システムに関しては保存性が高く,大半は「卵生」です。中には,「卵生」が特殊化した「卵胎生」や,最も特殊化を果たしたとされる「胎生」も知られています。我々はまず,カゲロウ類の中でも特殊な「卵胎生」であるフタバカゲロウ属の系統解析を実施しました。特に北米,欧州から東アジアにまで分布するフタバカゲロウ Cloeon dipterum については,日本列島と朝鮮半島に分布する系統が,他地域の系統と遺伝的に大きく分化していることを示しました。また,並行して実施している組織化学的研究から,日本列島のフタバカゲロウは卵内にタンパク質性卵黄がなく,母体から卵への栄養供給をしている「胎生」昆虫であることも示唆されています。また,従来昆虫で報告されてきた,どの胎生タイプとも異なる可能性が高いことが分かってきました。さらに我々は,発生率・孵化率の観察や遺伝子発現解析を通じて,「胎生」の進化的意義や栄養供給システムの究明を目指しています。本セミナーでは,フタバカゲロウで発見された新規「胎生」システムについて,これまで蓄積してきた知見を紹介させていただきます。

<第25回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2019年11月7日(木) 15:00- 理学部3号館310号室
Dr. J. Arvid Ågren (Harvard University)
「Causes and consequences of genomic conflicts」
Historically, the predominant view of genomes has been one of highly coordinated networks, with all parts working together to produce individual organisms. This view is challenged by the existence of so-called selfish genetic elements, genes promoting their own transmission at the expense of other genes in the genome and to the detriment of the fitness of the individual organism, and other forms of genomic conflict. In this talk, I will present work on how two examples: transposable elements and the so-called Mother’s Curse. I will also put the study of genomic conflicts in the context of the history of social evolution and present some theoretical work linking the dynamics of selfish genetic elements to general study of conflict and cooperation.  

<第24回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2019年11月5日(火) 13:00- 理学部3号館310号室
大前公保氏(京都大学大学院農学研究科博士課程)
「好熱性水素生成一酸化炭素資化菌の分離、ゲノム解析及び分子生態学的研究」
概要: 
水素生成一酸化炭素 (CO) 資化菌は CO 脱水素酵素 (CODH) と呼吸型ヒドロゲナーゼ (ECH) の複合体を有し、CO 酸化と水素生成を共役させてエネルギーを保存する微生物です。本菌は環境で有毒な CO を除去し水素エネルギーに変換する生態学的重要性が指摘されています。しかし、記載された水素生成 CO 資化菌は陸上温泉を中心に 21 種と限られ、CO 酸化-水素生成共役系と異なる CO を用いた代謝様式や、多様性・分布といった生態に関する知見が乏しいままです。私たちはこれまで数多くの水素生成 CO 資化菌の分離に成功してきた他、約 14 万の全原核生物ゲノムから CODH/ECH 保有株を同定し、水素生成 CO 資化菌のデータベースを構築しました。本セミナーでは、新規水素生成 CO 資化菌のゲノム解析から明らかになった新規 CO 代謝機構と、本菌の生態解明に向けた分子生態の基盤構築の成果についてご紹介いたします。また、昨年分離に成功したユニークな新規水素生成 CO 資化菌に関する研究についてもご紹介いたします。

<第23回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2019年10月29日(火) 15:00- 理学部3号館310号室
新田ジョエル博士(スミソニアン国立自然史博物館)
「Ferns on islands: Community assembly, comparative ecophysiology, and biogeography of tropical Pacific pteridophytes.」
概要:
Ferns are commonly regarded as shady understory herbs, but this depiction belies a remarkable diversity of ecological strategies and a complex evolutionary history. In addition to the familiar terrestrial ferns, there are species that grow on other plants (epiphytes), on rocks, and in water, occupying habitats from desert to tropical forest. Ferns also have an unusual lifecycle, which alternates between two vastly different, free-living stages: the larger, diploid sporophyte and the tiny, haploid gametophyte. Very little is known about the ecology of fern gametophytes, or how this unique lifecycle has impacted fern diversification.
The islands of the tropical Pacific are an ideal place to study the diverse ecological strategies of ferns because of their extreme isolation and rich taxonomic diversity. In this seminar, I will present my research on the ecology and evolution of ferns in this area in three parts: (1) I investigate differences in phylogenetic community structure between fern sporophytes and gametophytes along an elevational gradient on the islands of Moorea and Tahiti, French Polynesia; (2) I combine comparative phylogenetic methods and community ecology to understand the evolution of epiphytic growth in ferns; (3) I present ongoing work to analyze the biogeographic history of ferns in the tropical Pacific in a global context.

<第22回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2019年10月1日(火) 13:00- 理学部3号館310号室
西村祐貴博士(理化学研究所)
「原生生物におけるミトコンドリアゲノムの多様性と進化」
概要:
ミトコンドリアは真核生物の共通祖先とα-proteobacteriaが共生したことによって誕生した細胞小器官であり、その内部にはバクテリアに由来するミトコンドリアゲノム(mtDNA)が存在する。mtDNAは真核生物の分岐とともにそれぞれの系統ごとに独自に進化したため、ゲノムサイズや構造、遺伝子レパートリー、可動遺伝因子、転写後修飾など様々な面で多様であることが知られている。しかしこれまでに解読された生物の9割以上が動物、陸上植物、菌類などの多細胞生物で占められており、原生生物(単細胞性真核生物)の多様性が網羅されているとは言い難い。そこで発表者はデータの蓄積が少ない、あるいは全く無い系統群に属する原生生物のmtDNAの解読、および他の生物との比較解析を行ってきた。
本セミナーでは原生生物におけるmtDNAの多様性を概説した後、発表者が行った研究の成果として(1)クリプチスタ生物群におけるゲノム構造と遺伝子レパートリーの比較、(2)真核生物内の複数の生物群で見られるRNA編集システムの分布と進化、という2つのトピックを紹介する。

<第21回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2019年6月7日(金) 16:00-17:30 理学部3号館412号室
石川麻乃博士(国立遺伝学研究所)
「海から川や湖へ!魚の淡水進出を支えた鍵遺伝子の発見」
概要:
魚は、進化の過程で、海から川や湖などの淡水域へ何度も進出しながら、さまざまな形や性質を獲得してきました。海と淡水域は、栄養分や浸透圧などに大きな違いがあるため、一部の魚たちは淡水域に何度も進出する一方で、全く淡水域に進出できない魚たちも多くいます。しかし、その原因となる遺伝子は分かっていませんでした。演者らは、海の餌に多く含まれ、淡水の餌には少ない必須脂肪酸ドコサヘキサエン酸 (DHA)に注目し、淡水域に進出したトゲウオは、このDHAを作る合成酵素Fads2遺伝子を複数持つため、DHAの少ない淡水の餌でも生きられることを発見しました(A. Ishikawa et al., Science 364, 831-832. (2019))。Fads2遺伝子は、他の幅広い種類の魚でも、淡水域に進出していない種に比べ、進出した種で増えていたことから、これまで何度も起こってきた魚の淡水域への進出のたびに鍵となる役割を果たしていたと考えられます。本講演では、この他の最新の研究成果も交えながら、生物の多様な生活史を生み出した適応進化の分子遺伝機構について議論する予定です。

<第20回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2018年10月18日(木) 10:00-12:00 理学部3号館412号室
Dr. Olivier Gascuel (CNRS and Institut Pasteur, Paris, France)
「Renewing Felsenstein’s phylogenetic bootstrap in the era of big data」
Abstract:
In this talk I’ll first describe our research and goals at the Institut Pasteur, Paris, and the new Center for Bioinformatics, Biostatistics and Integrative Biology (C3BI) I’m heading in the institute. Then, I’ll present a recent work (Lemoine et al., Nature 2018) on the phylogenetic bootstrap :
Felsenstein’s application of the bootstrap method to evolutionary trees is one of the most cited scientific papers of all time. The bootstrap method, which is based on resampling and replications, is used extensively to assess the robustness of phylogenetic inferences. However, increasing numbers of sequences are now available for a wide variety of species, and phylogenies based on hundreds or thousands of taxa are becoming routine. With phylogenies of this size Felsenstein’s bootstrap tends to yield very low supports, especially on deep branches. Here we propose a new version of the phylogenetic bootstrap in which the presence of inferred branches in replications is measured using a gradual ‘transfer’ distance rather than the binary presence or absence index used in Felsenstein’s original version. The resulting supports are higher and do not induce falsely supported branches. The application of our method to large mammal, HIV and simulated datasets reveals their phylogenetic signals, whereas Felsenstein’s bootstrap fails to do so.

<第19回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2018年3月8日(木)10:00-11:00 理学部3号館310号室
松井大氏(慶應義塾大学社会学研究科博士課程)
「カラスの採餌行動に関する形態・運動学的研究」
概要:
ニューカレドニアの固有種であるカレドニアガラスは、棒状の道具を巧み用いて朽木に潜む昆虫を釣り上げる行動を示します。このカレドニアガラスに代表されるように、カラス属の動物種は柔軟な行動レパートリーを有することが知られています。例えば、野生下では道具を用いないハシブトガラスも実験室環境下では道具を用いて餌を取得する課題をクリアすることが報告されています。
そのような一見「知的」な行動がいかにして実現されているのか?この問いに対し、効果器であるクチバシの「形態」及び「操作」という、より基本的な観点から迫ろうというのが、私の試みです。具体的には、3次元幾何学的形態測定、並びに高速カメラとトラッキングソフトを用いた運動学的計測をカラスに対し行なっています。本発表では、そこから明らかになりつつあることとして、(1) カレドニアガラスのクチバシ形態が安定した道具の把握に適した形状に進化していること (2) カラスのクチバシ操作が他種鳥類と比較して運動の視覚的制御に優れていることという2つの知見を紹介します。

<第18回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2017年11月10日(金)16:00-17:00 理学部3号館310号室
古川貴久氏(株式会社オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ)
「ナノポアシーケンサーの技術と生命科学研究での活用」
概要:
ナノポアシーケンサー(MinION)はナノメートルサイズのタンパク質の穴を通過する分子を測定するナノポアセンシングという技術を使った第3世代の核酸シークエンサーである。
手の平サイズという携帯性から、従来のラボでの実験・シークエンスといった活用にとどまらず、感染症の現場での菌の検出・同定など屋外でのシークエンスも実現している。また、昨年末のデータ出力量と性能の向上により、数十キロから数百キロを超える超ロングリード配列を産生することに加え、10Gbpを超えるデータ出力が可能になったことから、より様々なかたちでの生命科学研究への活用が進められている。
本セミナーでは、ナノポアシークエンスの技術から、その仕様、そしてすでに活用されている事例や論文の紹介を交えて、ナノポアシーケンサーの理解を深めていただくとともに、サンプルハンドリングやデータ処理についてなど、有効に研究に活用していくためのポイントも合わせて紹介をする。また、この際にはイギリスからアプリケーションスペシャリストも同席し、質疑や個別相談では先行してナノポアシーケンサーの利活用が進む欧州における経験や状況等もふまえた紹介や提案をしたい。

<第17回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2017年9月25日(月)10:00-11:30 理学部3号館310号室
井上新哉博士(北海道大学シュマの会)
「アンモナイトがフラクタルな模様の貝殻を作るメカニズム」
概要:
今は亡き絶滅動物であるアンモナイトは、現代では世界中で多産する化石の一つとして親しまれています。そして、化石化した外殻の直下に見られる縫合線と呼ばれる美しい模様、これが人々を魅了する大きな要因であることは否定しようがありません。
縫合線とは、外殻と、その内側に周期的に配置された隔壁(セプタ)との交線です。隔壁は外套膜と呼ばれる組織が鋳型となり、外套膜とまさに同じ形の構造として作られると考えられています。その為、縫合線の形成メカニズムとは、外套膜の成長プロセスと同義であると言えます。
従来の仮説では、外套膜は何らかの物理的な作用を受けて受動的に変形すると考えられていました。しかし、アンモナイト隔壁の高解像度な3Dデータを得る方法を開発したところ、3亜目4種のアンモナイトの隔壁に管状の構造が観察されました。この様な構造は、外套膜の受動的な変形ではなく、能動的に突起を生やしていたと想定することで、より簡単に説明ができます。
現生の軟体動物であるウミウシには、アンモナイト隔壁とよく似た形の背足突起(セラタ)を持つものがいます。このセラタの成長過程を観察したところ、アンモナイトの隔壁(=外套膜の成長の記録)とよく似ていました。このことから、軟体動物の外套膜には枝分かれした突起を生やすポテンシャルがあり、アンモナイトはその様にしてフラクタルに分枝した縫合線を形作っていたと考えられました。
私はこの新たな説を"セラタ・セプタモデル"と名付けました。このモデルは、現生の動物で普遍的に見られる現象のみを想定している点で、従来の仮説よりも優れていると言えます。

<第16回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2017年5月19日(金)15:00-16:00 理学部3号館310号室
Mr. Martin Steinegger (Max Planck Institute for Biophysical Chemistry)
「Fast and Sensitive Protein Sequence Search and Clustering for the Analysis of Massive Metagenomics Datasets」
概要:
Sequencing costs have dropped much faster than Moore's law in the past decade, and sensitive sequence searching has become the main bottleneck in the analysis of large metagenomic datasets. While previous search methods sacrificed sensitivity for speed gains, MMseqs2 is as sensitive as BLAST, more sensitive than PSI-BLAST, and two to three orders of magnitude faster.

<第15回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2017年4月19日(水)15:00-16:00 理学部3号館310号室
Dr. Christophe Dessimoz (University of Lausanne, University College London, and Swiss Institute of Bioinformatics)
「Making the most of noisy, low-quality genomes」
概要:
Despite technological progress, most eukaryotic genomes remain stuck in draft quality. In theory, the more we know about the sequence universe, the easier characterising new genomes should be. Frustratingly however, integrating information across genomes of varying quality levels remains conceptually and practically challenging. In the talk, I will first present an evolutionary framework to address this problem, then I will show how this can be used to extract good sequences from different annotation sets, or to identify genes that might be associated with functional innovation or adaptation in the evolutionary history of these genomes. To address the issues of contamination, lateral gene transfer, or hidden paralogy, I will also present a process-agnostic method to cluster subsets of genes that have a common evolutionary history.

<第14回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2017年4月5日(水)15:00-16:00 理学部3号館310号室
松本悠貴氏(国立遺伝学研究所)
「マウスの従順性行動関連遺伝子座とイヌの家畜化との関連」
概要:
動物が人に対して馴れる行動(従順性行動)は、家畜化の過程で人為的な選択を受けてきたと考えられると同時に、複数の種において見られる行動であることから、行動の収斂についてのモデルになると考えられる。従順性行動に関わる遺伝子座を明らかにするため、発表者らは8つの野生由来マウス系統を交配させて樹立した野生由来ヘテロジニアスストックを用いて、従順性に対する選択交配を行ってきた。8世代にわたる選択交配の結果、選択集団は、対照集団よりも高い従順性を示した。SNPアレイにより、選択8世代目の集団と祖先系統の2万以上のSNP情報を得たのち、家系情報を考慮したシミュレーションを利用したゲノムスキャンを行った。このシミュレーションベースの解析と、その後のジェノタイプ-フェノタイプ関連解析の結果、11番染色体上に二つの候補遺伝子座を同定した。さらに、従順性が高い代表的な愛玩動物であるイヌにおいて、当該領域の行動への効果についても検討した。本発表では、これらの結果について議論したい。

<第13回>
2016年6月24日(金)16:30-18:00 理学部3号館412号室
川添明里博士(中外製薬株式会社バイオ医薬研究部)
「製薬業界を取り巻く現状と競合優位性の確立」
概要:
製薬業界は、企業間の競争の熾烈化やライフサイエンスの進化に伴うイノベーション創出機会が拡大される一方で、後発医薬品問題や薬価引き下げ策導入などにより、今後の成長は非常に厳しい状況となることが予想される。我々は、この厳しい現状で成長を続けるためには、競合優位性確保と継続した新薬創出が重要だと考えている。本セミナーではこのような業界の現状を紹介するとともに、競合優位性の確保に向けた取り組みを紹介する。

<第12回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2016年4月22日(金)15:00-17:00 理学部3号館412号室
島田友裕博士(東京工業大学化学生命科学研究所)
「ひとつの生物の転写制御ネットワークを丸ごと理解するために」
概要:
生物はゲノムDNAから選択的に遺伝子を発現させることで、環境の変化に適応しています。遺伝情報の発現の調節は、主にDNAからRNAを合成する転写の段階で行われ、転写の制御はRNA合成装置のRNAポリメラーゼにシグマ因子および転写因子が相互作用することで行われます。近年のシークエンサー技術の発展により様々な生物のゲノムが明らかとなってきており、その生物がどのような遺伝子セットを持っているかは推測することが容易となってきました。その一方で、その遺伝子セットをどのように利用しているかという制御についてはゲノム情報のみからは明らかとすることができず、そのゲノム転写の制御システムを解明することは現在の先端的研究課題の一つとなっております。
そこで私たちは、転写制御因子のゲノム上の標的を直接的に同定するGenomic SELEX法を開発しました。この手法は、試験管内において精製したタンパク質と断片化されたゲノムDNAのライブラリーを混合し反応させた後、タンパク質と相互作用したDNA断片を増幅し、そのDNA配列を解析することで、タンパク質のゲノム上の結合領域、つまり標的遺伝子を同定する、というものです。Genomic SELEX法では直接的な影響と間接的な影響を区別して同定することが可能となり、転写制御の階層性を解明するための強力な手法といえます。
本セミナーでは、多数の転写制御因子について、その直接的な制御遺伝子を同定することにより、明らかとなりつつある大腸菌のゲノム転写制御のネットワークについてご紹介します。

<第11回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2016年4月7日(木)10:00-12:00 理学部3号館310号室
按田瑞恵博士(大阪大学微生物病研究所)
「染色体上からリボソームRNA遺伝子の消えた細菌の発見」
概要:
リボソームRNAは、地球上で最初の生物が誕生して以来、全ての生物のタンパク質合成を直接担う生命の根幹をなす成分です。そのような必須成分の遺伝子は、安定に維持される染色体によって子孫に伝えられるものと信じられてきました。実際、既知の細菌ゲノムにおいて、リボソームRNA遺伝子(rrn)は最大のレプリコンである染色体に存在し、染色体マーカーとして使用されてきた歴史があります。
演者らは、ダイズ地上部の細菌叢解析から始まった研究過程で、rrnの存在しない主染色体(rrn-lacking chromosome, RLC)とrrnが存在するプラスミド(rrn-plasmid)から成る新規のゲノム構造を持つ細菌群Aureimonas ureilyticaを発見しました。本セミナーでは、その特徴や系統分布を紹介し、本ゲノム構造の誕生した進化過程について考察します。さらに、研究生活の様子や論文発表までにいたるストーリーなども交えて話す予定です。

<第10回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2015年11月19日(木)16:00-17:30 理学部3号館412号室
深谷肇一博士(統計数理研究所)
「階層的なプロセスをモデル化する:階層モデルによるデータ解析」
概要: 
本発表では、生態学で「階層モデル」と呼ばれている一連の統計モデルを紹介する。階層モデルは、観測データを生成するプロセスの階層性が明示的にモデル化された統計モデルである。階層モデルでは生態プロセスと観測プロセスが区別される。これは、観測誤差を含むフィールドデータから関心のある生態プロセスの偏りの少ない推定を行なうために重要であるだけでなく、異なるデータを統合して精度の高い推測を実現したり、調査計画を検討する上でも大きな意味を持つ。
近年階層モデルは、捕獲再捕獲法データ、分布データ、個体群動態データなど、生態学研究で得られる様々なフィールドデータの解析に用いられており(ときに実験室のデータにも有用である)、また多様な拡張が盛んに開発、研究されている。発表ではこれらを概観するとともに、GL(M)Mなどの回帰モデルや状態空間モデル、階層ベイズモデルなど、よく知られた統計モデルとの関連を説明する。また、階層モデルを用いた研究例として、海産無脊椎動物の個体群動態データや魚類環境DNAのメタバーコーディングデータの解析例を紹介する。

<第9回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2015年10月23日(金)16:00-17:30 理学部3号館310号室
安達大輝博士(国立極地研究所)
「海洋動物の行動・生態の解明―バイオロギング手法による最新の成果」
概要:
海の中で動物たちはどのように行動しているのか。彼らが海生生物で私達が陸上生物である限り、私達は自然界での彼らの行動を逐一自らの目で追いかけることはできません。では、何か別の形で彼らの行動を追うことはできないのか―この答えの一つがバイオロギング(Bio-logging)という手法です。動物に小型記録計を装着し、彼ら自身に自らのデータを取得してきてもらう。得られるデータは潜水深度、水温、体の動き(e.g. 加速度)など多岐に渡ります。
本発表では、バイオロギング手法について簡単にレビューしつつ、海棲哺乳類、及び潜水性海鳥(ペンギン等)において私達が明らかにした最新の成果をご紹介します。具体的には、主に、私の研究対象種であるゾウアザラシ類を例にとって、海洋動物の(1)遊泳・採餌行動と浮力との関係、(2)再構築した三次元遊泳軌跡から明らかにされた採餌行動特性、についてご紹介します。また、海洋動物の目線を小型ビデオカメラによって再現、その動画を深度・加速度データ等と併せて解析することで得られた最新の知見についてもご紹介致します。

<第8回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2015年9月17日(木)15:00-16:30 理学部3号館412号室
土松隆志博士(東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系)
「集団ゲノムデータから探る自家交配の進化史:シロイヌナズナとその近縁種を例に」
概要:
植物における自家交配(自殖)とは,自己の花粉と胚珠によって種子をつくる繁殖様式である.自殖は近交弱勢を伴うものの,遺伝子の伝達効率の良さや一個体でも子孫を残せるという繁殖保証の有利さから,適応的な形質であると考えられてきた.自殖は被子植物の中で何度も繰り返し進化してきたことが知られている.自殖の平行進化はどのような突然変異によって起きるのか.それらの突然変異に普遍的な性質は見られるのか.自殖が進化すると植物の集団はどう変化していくのか.セミナーでは,集団ゲノムデータが蓄積したモデル植物シロイヌナズナとその近縁種を材料に,これらの問いにアプローチした私達の研究を紹介する.

<第7回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2015年9月2日(水)10:30-12:00 理学部3号館412号室
豊島有博士(東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻)
「3次元的に密集した細胞核の高精度な自動認識手法」
概要:
線虫はすべての神経細胞とその配線が既知であり、神経ネットワークによる情報処理の動作原理を理解する上で有用である。近年の顕微鏡技術の発展により、線虫頭部の全神経の活動を同時に観察できるようになってきた。このデータを既知の神経ネットワークと対応付けるためには、画像中の180個以上の神経細胞を漏らさず認識する必要があるが、細胞同士が3次元的に密集しており、一般的な画像解析手法では近接した核をうまく分離できなかった。そこで本研究では、画像解析による細胞核の自動認識精度を向上させることを目指した。
本研究はCREST共同研究プロジェクト 「神経系まるごとの観測データに基づく神経回路の動作特性の解明」の一部である。神経回路の情報処理機構の動作原理を明らかにする上で、関連する諸分野についても紹介したい。

<第6回(生物科学専攻公開ラボセミナー)>
2015年3月18日(水)16:00-18:00 理学部3号館412号室
福島健児氏(基礎生物学研究所・総合研究大学院大学生命科学研究科)
「食虫植物における消化酵素の収斂進化」
概要:
複数の生物種が類似した環境へ適応する場合、機能的には同質だが相同性のない形質が独立に出現することがある。このようなプロセスは収斂進化(convergent evolution)と呼ばれ、鳥類とコウモリにおける飛翔能力の獲得や、サボテン科とトウダイグサ科における乾燥地適応など、生物全般に見られる現象である。被子植物における食虫植物の進化はその典型例であり、5つの目において食虫能力を持たない植物を祖先として独立に出現している。これらの植物は、動物を“食べる”ことで貧栄養環境へと適応しており、どの系統においても獲物の誘引・捕獲・消化・吸収を可能にする新奇形質を備える。
演者らは、繰り返し進化の遺伝的基盤を探るため、消化機能に着目して複数系統の食虫植物を対象に研究を進めてきた。その結果、(1)オルソログ関係にあるタンパク質が消化酵素として進化する傾向にあること、(2)独立の系統で収斂的なアミノ酸置換が蓄積していることなどが明らかとなった。発表では、消化酵素の解析から見えてきた遺伝子レベルでの進化的共通性について紹介し、収斂進化を駆動するメカニズムについて議論したい。

<第5回>
2015/2/18(水) 13:30- 理学部3号館412号室
佐々木浩博士(東京大学分子細胞生物学研究所) HP
「ショウジョウバエRNAi酵素複合体形成における基本過程の解明」
概要:
small interfering RNAs(siRNAs)やmicroRNAs(miRNAs)といった20〜30塩基長の小分子RNA(small RNA)を介して、相補的な配列領域をもつmRNAの発現が抑制されるRNAサイレンシングは、真核生物に広く保存された転写後発現調節機構です。RNAサイレンシングにおいて小分子RNAは、Argonaute(Ago)タンパク質とともに、RNA-induced silencing complexes(RISCs)と呼ばれる複合体を形成して機能します。これまでRISCの形成過程については、ショウジョウバエAgo2をモデルに遺伝学的・生化学的解析が進められ、RISC形成がRNA二本鎖の積み込みと、続いて起きるパッセンジャー鎖の排出の2段階からなること、またRNA二本鎖の積み込みにDicer-2/R2D2ヘテロダイマーやHsp70/Hsp90シャペロンマシナリーが必要であることが明らかになっていました。しかし、不安定な中間状態を生化学的・構造生物学的に捉えることは困難であり、RISC形成過程をこれ以上詳細に調べることは限界に達していました。
そこで私たちはショウジョウバエAgo2-RISCの試験管内完全再構成系を確立し、全反射顕微鏡法と組み合わせることで、RISC形成過程の1分子レベルでリアルタイム観察に世界で初めて成功しました。その結果、シャペロンマシナリー非存在下で、Dicer-2/R2D2/siRNA複合体がAgo2に結合と解離を繰り返すことを見いだしました。さらに、シャペロンマシナリー存在下でガイド鎖5’リン酸基の認識が起きることで、Dicer-2/R2D2/siRNA複合体のAgo2上の滞在時間が延長し、siRNA二本鎖の積み込みが促進されることを明らかにしました。
本セミナーでは、RISC形成1分子イメージングの研究成果について、これまでの経緯や苦労話も交えつつ紹介します。

<第4回>
2015/1/8(木) 15:00- 理学部3号館412号室
小野田雄介博士(京都大学大学院農学研究科) HP
「植物形質データを利用したマクロ生態学的解析」

<第3回>
2014/11/12(水) 13:00- 理学部3号館412号室
青木誠志郎博士(東京大学大学院総合文化研究科)
「Study of the origin and evolution of rhizobia」

<第2回>
2014/11/10(月) 13:00- 理学部3号館310号室
山崎洋人氏(慶應義塾大学大学院理工学研究科)

<第1回>
2014/6/11(水) 16:30- 理学部3号館310号室
吉澤晋博士(東京大学大気海洋研究所)
畠山理広博士(Department of Biology, Brandeis University, USA)